ペットショップではそれぞれお勧めのフードがあって、良さを説明してくれます。バリエーションがあるのは良いけれど、どれを選べば良いのかわからなくなってしまいます。
そこで「いぬの幼稚園バウバウ」が実際に行っている良質なフードの選び方をご紹介いたします。
もくじ
良いフードの前提条件とは
犬にとって良いフードとはどのようなものを指すのでしょうか?
家庭で飼育されている犬は、自分で食事を選ぶことができません。
飼い主様が良いフードの条件を知っておく必要があるのです。
まず一番は嗜好性が高いことです。どんなにすばらしいフードであっても犬が食べてくれなければ意味がありません。食べる喜びを感じることは犬にとって大切なことですし、それだけで飼い主様との絆を深めることになります。
次に当たり前のことですが、フードを食べて身体を壊したのでは元も子もありません。
原材料が汚染されていないこと、加工の過程で有害な物質が混入しないこと、劣化や腐敗を来していないものが最低条件になります。
良いフードの条件として最後は栄養を満たすことです。食べ物は身体の健康を維持し、日々の活動を支える燃料なのです。そのためには適切なバランスで栄養素をとる必要がありますし、痩せも太りもしない最適なカロリーに設定することが重要です。またお腹の中できちんと消化ができて、吸収できるものでなければ意味がありません。
代表的なドッグフードの事故
前項でフードの条件として毒物が混入しないことをあげましたが、実際に混入した事故が過去に起こっています。
2007 年にアメリカのメニューフーズ社が製造したキャットフード/ドッグフードに毒物が混入しており、世界中で39000 頭ものペットが亡くなったのです。メニューフーズ社から購入し、自社ブランドとして販売していたのは実に131ブランドにも達しました。原因として、メニューフーズ社はフードの製造を中国の工場に委託していたのですが、安全管理などの確認を行っていなかったのです。そのため本来はプラスチックを製造する際に利用されるメラミンという化学物質がフードに混入し、この物質が他の化学物質と反応することで強い毒性を示したのです。大企業のフードだから安全とはいえないことが示されました。
“本当に”良いフードとは?
これまで見てきた良いフードの条件ですが、何か物足りませんでしたか?
それは嗜好性が高く、毒性がなく、栄養に優れてる。そんなの当たり前じゃないかと思いますよね。
そうなんです。これらは愛犬に食べさせるフードの最低条件なのです。では本当に良いフードとはいかなるものでしょう。それは食べる愛犬が健康になってくれるフードなのです。すべての飼い主様が願っていること、それは愛犬がいつまでも元気で健康でいてくれることだと思います。毎日食べるものだからこそ、健康に気をつけてあげたい。良いフードとはその願いを叶えることのできるものなのです。我々バウバウではそのようなフードを健康食と呼びます。手作りであるかドライであるか、ウエットであるかなどではなく、一緒に暮らす愛犬が健康になってくれるのであればどれでも正解なのです。
ドッグフードの原材料
ここからは実際ドッグフードはどのように製造されているのかを勉強していきましょう。どのように作られているかを知れば、良し悪しの基準も見えてきます。
まずフードの材料はどのように調達されているのでしょうか。図1 のにあるように牛や鶏を飼育している畜産農家は飼料を購入して、それを家畜に食べさせて成長させます。出荷可能な月齢に達すると食肉加工業者に卸され、そこで屠殺(とさつ)・解体がおこなわれ、人間の食用肉として流通していきます。食用肉以外の頭部、骨、スジ、脂肪などが大量に残りますが、これらを原材料として再利用が行われます。おもに動物性油脂を搾り取ることを目的としているのですが、この過程を「レンダリング」といいます。
レンダリングを受けた油脂は上質のものは人間の食用脂となり、その他のものは工業用油脂や家畜飼料用油脂として流通していきます。さらに油を搾り取ったカスはミートミール、チキンミール、ポークミールなどと呼ばれ農業用の肥料や家畜用飼料にまわされます。同じものがペットフードにも使用されています。
参照元:レンダリングとは【一般社団法人 日本畜産副産物協会】
http://www.jlba.or.jp/con08_3.html
原材料の調べ方
消費者がドッグフードの良し悪しを見分けるために最も大切な情報は商品の裏側に記されています。
ペットフード安全法という法律に基づいて賞味期限や原材料を正しく表記しなければならないからです。罰則規定のない法律ではありますが、各メーカーは不正のない表記を心がけています。この原材料表記を正しく読み解くことが良いフードと悪いフードの見分けにつながるわけです。
最近はあらゆる情報をインターネットで検索する時代になっていますが、メーカーのホームページはいわば広告なので自社に不都合な事実は隠したがります。また口コミやブログなどの記事も多数ヒットしますが、投稿者の素性も分かりませんし、個人の感想を超えるものではありません。
あまりネット情報を過信しすぎず、法律に基づいた原材料表示をしっかり読み込むことが肝心です。
原材料名の表示ルール
原材料表示には下記のような表記ルールが定められています。
全ての材料を表記するので、自慢になるものだけを表記するわけにいきません。一見不都合に見えるものも表記しないといけないのです。
表記される順番は含有されている量が多い順となっています。したがってトップに表記されている材料がそのフードのメインであると言えます。
後ほど詳しく説明しますが、人間の食肉のような素材そのままのものはあまりドッグフードには用いられていません。レンダリング(油脂を搾り取ること)後のたんぱく成分などが主に用いられています。そのような食材はレンダリング材料であることを明記しなければならないルールがあります。
さらにビタミン剤や保存料などの添加物もすべて表記しなければならないこととなっています。
レンダリング材料
ここからはドッグフードの原材料表記で目にする独特の表現について説明していきます。
レンダリングについては先に説明したように、人間用食材を取り除いたあと、油脂を取り除いて再利用することを言います。レンダリング材料とはそのレンダリングを受けた後に残るたんぱく成分や有機成分のことを指します。
動物性食材だけでなく、植物性の食材もレンダリングを受けます。穀物をレンダリングした油脂は食卓にもなじみ深いものが多いです。大豆油、コーン油などです。その後に残るレンダリング材料としては大豆ミールやコーングルテンミール等という名称でドッグフードに使われます。
悪い油脂に用心する
油脂の種類は動物性油脂と植物性油脂に分かれます。牛脂やひまわり油など材料名が明記されているものは人間にも使用される食用油脂であることが多く、単に動物性油脂、植物性油脂と表記されている場合は安い飼料用油脂であることが多いのです。
油脂類をドッグフードに使用する理由は主にカロリー量を供給したり、嗜好性を高めるためです。一方で油脂類は空気に触れると酸化して劣化することが多く、風味が損なわれたり、健康を害する恐れがあります。
肉類が多いように見せかける表記
フードメーカーは原材料表記で少しでも自社製品が優れていることを示そうとします。全くのウソではありませんが、不親切な表現方法を用いて消費者のイメージを誘導する場合があります。
下記、図2 の上段の原材料表記では肉類が一番多く含まれる材料となっています。飼い主様は肉類を多く含むフードを良いものと捉える傾向がありますので、このような表記にこだわるメーカーが多いのです。ところが同じ原材料でも表記の仕方を変えると下段のようになります。肉類とまとめていた原材料をチキンミール、ミートミール、チキンと分割して表記することで順番が異なってしまうわけです。ミートミールは牛肉ですからチキンやチキンミールと当然別の材料です。結局このフードで最も多く含まれるのはとうもろこしだと言うことです。ところが上の表記ではとうもろこしをコーンスターチ、コーングルテンミール、コーングルテンフィードと細分化して表記することで順位を下げ
ているわけです。
材料に含まれて欲しくないもの、その1
これまで見てきたようにドッグフードは人間の食べ物に比べて安価な材料を使用しています。これは消費者のニーズとして致し方ないところがあります。しかしながらいくらドッグフードとはいえ、愛犬の健康のためには絶対含まれて欲しくない材料があります。まずその1番目が遺伝子組み換え作物です。
アメリカ・カナダ地域などにおける農作物には遺伝子組み換え作物が多く出回っています。人間用の作物では一部制限もかかっていますが、家畜用飼料やペットフードには規制がありません。
遺伝子組み換えが生体に及ぼす影響は未知ですが、ほとんどの組み替えが除草剤耐性の目的であり、農薬にかなり汚染されていることが危険な点です。
材料に含まれて欲しくないもの、その2
4Dミートとは材料となる家畜がすでに死んでいるもの、病気のもの、死にかけのもの、障害や怪我をおっているものを指します。健康状態の不確かな材料は感染や汚染のリスクが高く、それ故人間の食材に用いることは禁止されています。
家畜は結局殺されて加工されるのだから同じようなものだろうと思うかもしれません。しかし日本人になじみの深い魚を例に取れば分かりやすくイメージできます。我々がスーパーで購入する魚は当然加工を受け、死んでいます。しかし、漁獲されたときすでに死んでいたり、死にかけの魚を食べさせられるとしたらいかがでしょうか?また病気にかかった魚や奇形の魚を活きが良いからといって食材に卸すでしょうか?つまり生き物に負担のかからない方法で屠殺(とさつ)したものしか食材にまわしてはいけないのです。
4Dミートによる健康被害
4Dミートといった恐ろしい食材が本当にペットフードに使われたりするものでしょうか?そこでミートが原因となった健康被害の一例を示します。
2017 年アメリカで販売されていたドッグフードを食べた犬に健康被害が出ました。同じ家族に飼われていた5頭の犬が体調を崩し、そのうちのパグ犬1 頭が亡くなりました。調査の結果このフードからはペントバルビツールという薬品が検出されました。ペントバルビツールは人間の麻酔などで用いられる薬剤であり、管理には法的な規制がかけられています。獣医療では牛や馬の安楽死に用いられることがあるとのことです。すなわちこのドッグフードでは安楽死させられた家畜の肉、すなわち4Dミートが材料として使用されていたということです。
どのフードメーカーも「厳格な品質管理」を掲げていますが、実際の品質管理がどれほどのものかはオープンにされてはいません。
材料に含まれて欲しくないもの、その3
家禽(かきん)とは、一般的にはアヒルやガチョウや七面鳥のことを指します。つまり野生の鳥とニワトリ以外の鳥全て含まれるものであり、ものすごく広範囲になります。いったいどのような飼育を受けた、どのような種類の鳥なのかまったくわからないわけです。つまり養鶏場や加工業者からレンダリング工場に集められた羽と二本足の生き物全てが、アットランダムに練り込まれているわけです。
このような仕入ルートの材料は4Dミートが混入していることも疑われます。そのためできるだけ家禽ミールを材料としているフードは避けた方が良いでしょう。
材料に含まれて欲しくないもの、その4
酸化防止剤の危険性については各種の議論があり結論は出ていません。ただ酸化防止剤をたくさん使うドッグフードにはその理由があることを知らないといけません。ドッグフードは安価で購入できる点が魅力ですが、原材料費の高騰などの煽りを受けやすい商品です。材料の中で最も高価になるのがタンパク源です。動物や魚の肉はどうしても高価であり、それだけで必要エネルギーをまかなおうとすると何倍ものコストがかかってしまいます。そのためドッグフードは安価でエネルギー豊富な油でカロリーを補うのです。脂肪分のカロリーはタンパク質や糖質の2 倍以上です。少量でも多くのエネルギーを稼ぐことができます。さらにレンダリングで得た油脂は非常に安いのです。では酸化防止剤は何のためでしょうか?油脂類は空気に触れると劣化する特徴を持っています。油脂類を多く使用していればいるほど油脂類の劣化を防ぐ酸化防止剤を使用しなければならないということなのです。
BHAやBHTといった酸化防止剤が含まれているフードは極力避けた方が良いでしょう。
良質なフードの選び方【まとめ】
これまでペットフードの見分け方について説明してきました。まぎらわしい表現方法や使用されて欲しくない材料について見てきました。最後にどのようなフードを選べば愛犬の健康を維持できるのかをまとめておきます。
まずは材料の正体がはっきりしていること。
我々が口にする食材とほぼ同じようなものであり、できればどの地域でどのように採取された食材なのかが、わかるものが望ましいものです。
ミールなどの表記があるレンダリング材料が極力少ないことが望ましい。
コストダウンのためには致し方ありませんが、できるだけ主食材はレンダリングされていないものを選びましょう。
酸化防止剤や保存料、ビタミン剤の添加が少ないものを選ぶ。
これらの添加物自体の良し悪しではなく、添加剤は油脂類の劣化しやすさや材料の栄養素不足を補うものです。裏を返せば添加剤を使わなければならないような不良な材料を使用していることになります。添加剤は極力少ないものを選びましょう。
小麦・コーン・大豆を含まない。
アメリカ・カナダでは大規模な遺伝子組み換え作物を栽培しています。ドッグフードにはそのような遺伝子組み換えの安価な穀物類が使用されています。これらは非常に多くの農薬に汚染されていますので避けておくべきです。国産メーカーであっても穀物類はほぼ100%輸入に頼っていますので避けておくべきです。穀物類は米や大麦、他いも類で炭水化物の供給をおこなうのが良いでしょう。
4Dミートなどの危険な食材が含まれないためには材料の調達方法、加工や包装などの製造過程をホームページなどでオープンにしていることが望ましいです。企業秘密という便利な言葉を用いて、どのような食材をどのように加工しているのか明らかにしないメーカーは信用するべきではありません